地域密着の自動車整備工場C社が黒字転換を実現した改善プロジェクト
企業概要
A社は、創業から三代続く地域密着型の自動車整備工場です。従業員数は30名、地域の固定客を中心に堅実な経営を続けてきました。しかし近年、自動車販売の低迷や人材不足、整備単価の低さにより収益悪化が続き、抜本的な改善が求められていました。
課題
A社には次のような構造的課題がありました。
- 車販の問題点:
車販が減少すると整備入庫が減少するが、車販は苦手であり、更に後述する納車引取で営業できず - 納車・引取の負担:
無料対応が当たり前となり、営業担当者が手一杯。営業活動に割く時間を奪っていた。 - 低い整備単価(レバーレート):
業界平均に比べ低い時間チャージ設定で、消耗品や人件費の高騰を転嫁できていない
実施内容
HMCは、A社の内部・外部環境を徹底調査し、経営改善計画を策定しました。その中心施策は以下の通りです。
1. 収益構造の見直し
- 整備単価の引き上げ:
当面15%の引き上げ実施、数年で25%引き上げの計画。但し、単に値上げだけでは顧客負担が増加してしまうため、従来純正部品に拘っていたところをリプロダクト、中古部品などの利用も提案することで粗利を増やしつつ、最終顧客負担は抑制する戦略をとった。 - 納車・引取の有料化:
有料料金を設定し、無償サービスによる人員負担と収益悪化を解消。 - レッカー事業の強化:
収益性の高いレッカーを重点事業に位置づけ、経営陣も現場に加わる体制へ転換。
2. 組織体制の再構築
- 若手中心のプロジェクトチーム設立:
改善の推進役を担い、現場との方向性齟齬を解消。 - 幹部会の定例化:
若手も含めた幹部会を設け、PDCAサイクルを回す仕組みを整備。
3. 経営者の現場参画
- 経営陣が整備やレッカー業務に加わり、現場感覚を取り戻しつつ、従業員からの信頼を醸成。
結果
改善施策の実行により、A社はわずか1年余りで目に見える成果を上げました。
- 黒字化の実現:
工賃引き上げ+レッカー収入の増加により、赤字体質を解消。 - 車販の低迷を補完:
整備単価改善と新たな収益源確保で安定経営に転換。 - 入庫台数の回復基調:
営業が車販・車検獲得へ注力することができるようになり入庫も増加。工賃アップ後も顧客離れはほぼ発生せず。
モニタリング報告でも、「売上総利益は前年比+4M」「車検入庫台数は増加基調」「レッカーも順調に増加」といった成果が確認されています。
HMCの支援の特長
今回の事例では、単なる数字上の改善策提示にとどまらず、以下のような点が成果につながりました。
- 定性面と定量面を両輪で改善
数字で裏付けした計画と、現場メンバーの意欲を引き出す仕組みづくりを並行実施。 - 現場との合意形成を重視
個別ヒアリングを踏まえた改善計画で、従業員の納得感を醸成。 - 「収益性の高い業務」に集中させる構造改革
無料サービスや低単価業務を是正し、レッカーなど高収益分野へ人員再配置。
まとめ
A社の事例は、自動車整備業に共通する「無料サービスの慣習」「低い整備単価」「販売依存」という課題を、構造的に解決した成功事例です。地域密着型でありながらも、従業員を巻き込んだプロジェクト体制で改革を進め、早期に黒字化を実現しました。
HMCは今後も、業界特有の課題を抱える企業に寄り添い、「数字に基づく改革」と「人を活かす組織づくり」で持続可能な経営改善を支援してまいります。
※事例については、クライアントの機密を守るために、内容調整を行っております。