金属加工業A社:価格戦略と営業再構築で赤字脱却
※事例については、クライアントの機密を守るために、内容調整を行っております。
- 業種
- 金属加工
- 従業員
- 約30名
- テーマ
- 収益構造の再設計・価格交渉・後継者育成
1. 企業概要と背景
A社は大手メーカー向け部品加工を主力とする金属加工企業です。
創業以来、初代代表の技術力と真面目な仕事ぶりで信頼を獲得してきましたが、コロナ禍で主要顧客の投資が急減し受注が大きく落ち込みました。
雇用維持を最優先した結果、固定費を削減できず多額の累積赤字を出しました。
2. 顕在化していた課題
A経営悪化のきっかけは「コロナ禍」ですが、その前からA社には気づいて気づかぬふりをする課題がありました。
- 価格設定が数十年変わっておらず、採算が取れていない案件が多数
- 原価積算の仕組みが弱く、「どの仕事でいくら儲かっているか」が見えない
- 営業は代表に属人化し、高齢化により新規開拓も価格交渉も十分にできない
- 後継者候補や幹部はいるものの、営業・対外折衝を任せきれていない
収益構造と営業体制の両面からのてこ入れが必要な状況でした。
3. HMCの改善アプローチ
HMCは「原価×賃率×営業体制」の3点を軸に支援しました。
1. 原価積算と賃率目標の設定
- 工数・材料費・人件費・消耗品などを洗い出し、案件別に原価を再積算
- 限界利益÷工数で賃率を算出し、現状把握と必要な目標水準設定
- 新規取引先はこの賃率を満たす価格で見積り、既存取引先は新規案件から順次賃率を引き上げ
2. 新規開拓と取引先ポートフォリオの見直し
- 主要顧客の受注回復を待つのではなく、細かな新規取引先を継続開拓
- 主要顧客で不足する売上を、新規先で段階的に補うポートフォリオを構築
3. 後継者への営業機能移譲
- ビジネスマッチングや商談の場へ後継者候補を積極的に参加させる
- 見積作成や価格交渉準備を通じて、賃率と原価の考え方を実務で習得
- 代表は重要局面に集中しつつ、日常的な対外対応を徐々に移譲
4. 支援の成果(前年比ベース)
支援の結果次のように改善が進みました。
損益の改善
- 売上高:前年比10%増
主要顧客の受注回復と新規先の積み上げにより、必要売上高に近づきつつあります。 - 営業利益:大幅赤字から黒字化(償却前利益増で返済原資一定確保)
価格交渉力の向上
- 原価積算に基づく説明ができるようになり、新規・既存双方で価格改定が前進
- 下請け関連の法整備も追い風となり、大手側も値上げ要請に応じやすい環境に
組織と事業承継の前進
- 後継者がビジネスマッチや商談の前面に立ち始め、代表の属人負荷が軽減
- 経営の意思決定が代表一人から複数名へと分散し、組織の活性度が高まった
5. まとめ
A社の取り組みは、単なる「値上げ」ではなく、原価と賃率に基づく価格の再設計と、それを実行できる営業体制づくりを同時に進めた事例です。
環境変化が激しい中小製造業において、「いくらで受注すれば会社がきちんと儲かるのか」を数字で押さえ、それをもとに営業と組織づくりを行うことの重要性を示しています。